第4回 柳瀬昭彦氏 講演

2014年8月8日

2011年7月2日 於 Hiro Chikashige Gallery

『古代吉備の生産と集落』
”稲作•塩•そして鉄  上東遺跡•百間川遺跡 ”
柳瀬氏は現在岡山商大非常勤講師をお勤めですが長年岡山県の文化財畑で発掘調査を担当され「百間川遺跡、上東遺跡」などの貴重な実績をあげられてきた現場人といってよいと思います。その柳瀬氏に弥生時代の吉備の生産力、主に米、塩、鉄に関してお話を伺いました。



柳瀬氏は繰り返し「決定的なことはいえない』という主旨を述べられていますが、これは「科学者」としてしごく真っ当なお話です。百間川遺跡は面積として最大級の水田跡なのですが、この一点をもって「吉備が国内最大の田園地帯である」とは言えないわけです。ほかのエリア(他府県)でも掘れば出てくる可能性はあります。講演の中でも「島根県荒神谷遺跡」の銅剣発掘の例を出されていますが、まったくそのとおりで、それまでは出雲には大きな王国と呼べるようなものはなかったとする説が有力だったのに、今は完全にひっくりかえっています。このように総てを掘り起こせないという現実がありますので、そこは客観的な視点を失ってはならないと思います。ひるがえって「王の居館や倉」が吉備において発見されていないことも指摘されています、これも同じ意味で今後の発掘に期待しましょう。いずれにしても、吉備の米と塩は余剰生産力を持っていたので、他にひけをとらない有力な地であったと結論されています。
 つづいては、「吉備特殊器台」に関するお話で、「この時代の宗教(祭祀)は権威そのもの」という見解を述べられています。