豊葦原の「瑞穂」とは? 06-Nov.13
この店は岡山市内、田町の北端、県庁通りに面して静かに構える「四季彩菜 瑞穂(みずほ)」という板前割烹である。豊葦原瑞穂国からこの名をとっているのだが、「この豊かな国に生まれた旨しもの」ということなのだろう。吉備邪馬台国説ではこの吉備の国(岡山)こそが豊葦原瑞穂国、豊葦原中国ということだから何と自然なネーミングという感じ。そのドアをあけると奥に長いうなぎの寝床で奥が座敷、手前が8席ほどのカウンターである。
さてカウンター右端の大将の真ん前に陣取るとさっそく「つきだし」で生ビールをいただく、間もなく注文した「刺し身盛りあわせ」が大振りの備前で登場した。いつも思うが美しいさしみだ、客の「こうあってほしい」という姿をこまやかな気遣いで実現している。素材の旨さが主であるにちがいないが、そこにほどこされた仕事や器などが完成度を高めていると感じる。まぁ、とにかく旨い!
この店の日本酒もいける、主人の関心は酒にもその多くがそそがれ、和食と酒、酒と和食のよりよい関係を模索しているのだろう。特に注文しなければ「おすすめの酒」を冷酒でchoiceしたグラスに注がれる、病気治療中の身ではあるがここでは解禁!主人との会話もはずむ。となりでは家内が適当に料理を注文している、「ぶり大根」「かきの揚げ出し」などなど順々に登場してくるがどれも味に芯が通っていてオールスターのピッチングスタッフのようである。もしかしたら、酒をやらない人には少し軽い椀ものかデザートのようなものが中継ぎや抑えとして登場するのもよいかもしれない。
主人はその風貌からぼくらと歳が近いと思っていたが意外に若い、話もユーモアのセンスがあり気をそらさないが言の葉の端に料理への強い思いが滲む。そのうえ勘定のときにビックリさせないところもこの店の「お気に入り」の重要ポイントだ。
ときにその値段と満足度に大きくバランスを欠く店がある。我々のアートの世界でもよくあるが、「勘違いも甚だしい!」と思う経験はだれしもあるだろう。しかし、ここ瑞穂はいつも僕の腹と心を満たしてくれる。そしてこのまだ若い?主人が更なる食の世界を味合わせてくれることを次回の楽しみに、帰路のタクシーに乗り込んだ。今日もごちそうさまでした。
ちょっと照れた瑞穂の大将